肥溜めに落ちた私のヒーロー


柔らかなストーブの光と私のヒーロー。


おじいちゃんが小さなストーブにその日の薪を焚べる。薪ストーブは冬は暖かくて、お正月にはきねとうすで餅をついた。出来上がるたびに美味しく分け合ったお餅のなんて美味しいこと。柔らかくて甘くて未だに記憶から消えないのだから不思議だ。


おじいちゃんの畑は、家から歩いてすぐの所にあり、おじいちゃんは毎日畑仕事に行く。


トウモロコシ、イチゴ、大根、キャベツ。


私はおじいちゃんの後ろをトコトコ付いて回り、小さいなりに畑仕事を毎日のように手伝って。そこには楽しい記憶がたんまりと詰まっている。


ある日、私はいつものように畑仕事についていき、畑にある大きな大きな肥溜めに丸ごと落ちた!


「わーん😭‼️」


泣いて顎まで肥溜めに浸かった私を、おじいちゃんは慌てて助け出し、すぐさま家に連れ帰った。


汚くて臭くて怖くて。私はなかなか泣き止まなかった。おじいちゃんは、すぐさまお風呂場に私を連れていき、シャワーで洗い流してくれた。


「泣くな泣くな。洗えば綺麗になるから😌」


「お母さんに叱られる」


「おじいちゃんが服を洗濯しておくから、大したことないだろ?」


そう言って新しい服を着せてくれた。


臭くて汚くて怖くて。それがおじいちゃんの全てですっかり消えた。


その日からおじいちゃんは私のヒーローになったのだ。暗い肥溜めから救い出してくれた私のヒーロー。


それから私はおじいちゃんにべったり。


おじいちゃんの好きな水戸黄門を一緒に見た。相変わらず2人で畑に言った。ご飯を一緒に食べて時々同じ布団で寝た。


冬が来るとおじいちゃんを思い出す。


保育園におじいちゃんが毎日送り迎えしてくれる。寒い冬を雪の中ソリで送り迎えしてくれた。



肥溜めまみれの汚くて臭い小さかった私を。

大丈夫だからと温めてくれた優しい手。


おじいちゃんは永遠にヒーロー。

私の大切なヒーローだから。



<田舎の更にど田舎生まれ>

私の小さな頃は石油ストーブが家に無かった。村には当たり前にコンビニや信号は無くて電車も通ってない。山と海しかない辺鄙な田舎の村だ。


でも小さい頃は不自由は1つも無かった。山に川に海に原っぱに畑に田んぼ。遊び場は沢山あったのだから。


そんなど田舎での小さな頃の1つの想い出。 


肥溜めに全身落ちたことがある人は、この世にどのくらいいるだろうか笑。恥ずかしいがそれも温かさに変わるほど、優しい祖父だった。


祖父との想い出にここに記憶を記す。